第12回福井読書会【ポンコツ】レポート(執筆者・藤沢一弘)

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刊行当時からタングの可愛さにメロメロになっていた世話人。

「課題書にしたいけれどミステリーじゃないしなぁ」と躊躇していました。

しかしながら映画化のニュースを聞いた時、「この機会を逃すわけにいかない!」と、映画(映画版タイトル『TANGタング』)の公開時期に合わせての開催を決定。

念願叶い、タングの可愛さについて語り合う機会がついにやってきました!

が、しかし、「あの仕草が微笑ましい」とか「あのセリフにキュンとくる」など、タングの可愛さに関する話題がほとんど出てこないという予想外の事態に。

ど、どういうこと?!

発端は福井読書会常連の参加者の自己紹介の際における「タングは可愛いけれど、あえて今回は逆張りでいきます」宣言から始まりました。

不穏な気配を感じつつも参加者の皆さんから感想や意見を一通り聞き始めると、逆張り宣言に勇気を得たのかどうか、宣言者だけでなく他の参加者からも厳しい意見が続出。

まずは主人公のベンについての集中砲火。

・(特に前半)ダメ男ぶりにイライラさせられる。

・お金に不自由していなくて苦労知らず。

・いい歳して子供のまま。

・何が魅力なのか分からない。

そしてベンの妻エイミーに関しても、イライラさせられるとか、ベンと結婚するまで惹かれた理由が分からないとか、男を見る目が無いとかなど散々な言われよう。

うん、分かる。分かりすぎるよ。

確かに自分も初めて読んだ時はイライラさせられたもんねぇ。

で、でも、タングとの旅を通じて成長する姿が感動的に描かれたりしてない?

・・・と思ったら、「34歳にもなって苦労知らずのベンが、世界半周の旅から帰ってきたぐらいでは変われないと思う」「のび太よりダメ男かも」なんて、身も蓋も無い意見も。

き、きびしい(汗)

更には

・旅に出なくともタングを直すのはお金で解決できたのでは。

・そもそもタングがちゃんと話していれば旅に出る必要も無いよね。

・ボリンジャーってマッドサイエンティストの割には抜けている。

・リジーの行動も理解しづらいかも。

などといった登場人物に関する突っ込みが多数。

むむ、気を取り直して他の意見や感想を聞いてみると、

・近未来として描かれているけど、アンドロイドがこれだけ発達しているならもっと他の事も科学的に発達しているんじゃ。

・映像化向きだけど、読者に開示されている情報が少ない。

・タングの可愛さに目が行くけど、意外に生々しいところもあって内容は子供向けでは無い。

・SFというよりメルヘンといった印象。

・物語としては色々詰め込み過ぎのような。

・旅の前半はロードノベル風だけど、これって必要かと思う場面も多い。

・ベンが獣医を目指していたという設定は、ロボットを可愛いペット扱いにしているのでは。

などといった世界観などに関するツッコミや意見にタジタジになるポンコツな世話人。

いやいや、ここは課題書に設定した者として擁護する意見も募集しなければ!

・ベンは自分自身では気づけないほど、両親の死によるショックを受けたままだったんだよね。

・タングを特別な存在と感じたのは、ポンコツなタングを見て、ダメな自分を重ねて見えたのでは。

・何もなし遂げた事のないと言われたベンは、誰かの力でタングを直すのでは無く、自分の力でタングを直す事で自分自身を変えられると、無意識に感じていたから旅に出たのでは。

・タングがアンドロイドに対して敵対心を抱いているのは、タングがタングとして生まれる前の記憶がトラウマとなっていたからなのね。

・アンドロイドが暴走する場面では、アシモフのロボット三原則のように、アンドロイドへの制限に関する設定が活きている。

・著者のあとがきにもあるように、不要に思える場面や逆に描かれていない事に関しては、読者自身の想像や考え方に委ねられているのでは。

・エイミーも様々な経験をして成長している。

おお、ちゃんとした読書会っぽい(笑)

それに、タングの可愛さやお気に入りの場面についての声も。

・エスカレーターで何度も上り下りする場面。

・グラスボートで魚に夢中になる様子。

・ガムテープをいじいじする姿。

・ディーゼルで酔っ払ったようになる姿。

・雪だるまを作る場面。

・ベンのために料理をする場面。

・ベンへの愛情や友情を表したり、ベンを気遣う場面。

そうそう、そうなのよ!

訳者の松原葉子さんいわく「魔の2歳児」のようにベンを振り回す姿も含め、とにかくタングの可愛い場面が多く、思わず「子育てあるある」にニヤッとしたり、和んだり、そして涙したりする場面も多いんですよね。

また、こういう機会が無ければ本書を手に取らなかったとう方もいらっしゃる中、ベンとタングの旅が描かれる前半が楽しかったとか、タングの行動に自分が子供の頃にも同じような事をしたのを思い出したといった感想もあり、やはりタングとベンの友情が深まる姿が愛おしい場面として印象に残ったという方が多かった模様です。

もっとも、「可愛いだけの場面はいらない」とか「あざとくない?」といった意見も飛び出してもいましたが(汗)

ちなみに無職で家事もろくにしないベンに対し、家事を行ってくれるアンドロイドを購入したいと言っていたエイミー。

弁護士として活躍する彼女ならベンに黙ってでも自分で購入しちゃえばいいのにという意見もあったんですが、それに対して「その時にはロジャーの件もあり、自分で購入するとあとで問題になると思ったのでは」といった鋭い推理が出たのには、一同思わず納得(笑)。

ところで、物語としては色々詰め込み過ぎているのではといったご意見もありましたが、多様性など社会の様々な問題についても触れ、それを乗り越えて優しい世界を描きたいというような願いが物語の中に込められているのかも知れません。

実際、シリーズが進むにあたって、命、ロボットやアンドロイドと人間とのあいだの愛情、差別や同性愛、いじめや、社会への適応性など、様々な問題を通じ、ベンやエイミー、そしてタングたちが成長していく様子が描かれていきます。

そう、タングの可愛さだけでなく、人間の生々しい性といったものも遠慮なくぶつけてきますので、読んでいて辛くなるような場面もあったりしますが、まだ1作目のみ読まれている方は、是非、2作目以降も読んでタングたちを見守って欲しいです。

もちろん、タングの可愛さもパワーアップしていますので、ご安心を!

また、参加者の中で映画版、そして劇団四季のミュージカル版をご覧になった方からは映画や舞台版の魅力についてのお話も出ました。

二宮和也さんのダメ男ぶりがまさにベン(映画の中ではケン)にぴったりだった映画版をご覧になられた方、まるで生きているかのようなタングの動きに感動する劇団四季の舞台をご覧になられた方、もし原作は未読でしたら、原作を読むとより一層タングの可愛さを堪能できますので、是非、手に取っていただきたいところです。

ところで、今回の開催にあたり、シリーズの翻訳を手掛けられている松原葉子様、そして小学館編集部様より、参加者の皆様にコメントをいただきました。

松原葉子様、そして小学館編集部様、あらためて御礼申し上げます。

そして今後のシリーズのご紹介、楽しみに待っております。

さて、次回の福井読書会ですが、11月5日(土)を予定しております。

課題書は、まさに「ミステリー読書会」にぴったりな作品を考えております。

お楽しみに!

※会場には世話人がお邪魔している書店の店主さんによる手作りのタングをお借りし、一緒に参加してもらいました。F書店様、ありがとうございました。

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全国翻訳ミステリー読書会

海外のミステリー小説専門の読書会です。 開催地は北海道から九州まで全国に広がっていて、多くの参加者にお楽しみいただいています。 参加資格は課題書を読み終えていることだけ。ぜひお近くの読書会にご参加ください。 また、読者が選ぶ翻訳ミステリー大賞、略して『どくミス!』を年に一回(4~5月)開催しています。 こちらも併せてお楽しみください。

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