投票コメント全紹介 その2

今回は、9位と10位の作品へのコメントをご紹介します。その1はこちら。第9位『さよなら、シリアルキラー』バリー・ライガ/満園真木(訳) 東京創元社
  • シリアルキラーの息子として生まれたジャズ。少し影があるキャラクターだが、ガールフレンドを大切にし、心を許せ る友もいる。少年の成長小説でもあり、ミステリ要素もふんだんにちりばめられた佳作。本当なら第二作『犯罪者たちの王』も一緒に投票した かったのですが、今回はひとり一冊とのことなので涙をのんでシリーズ第一作を推します。
  • あらすじだけ見ると、なんとも重い話に思える。しかし、それを裏切って軽く読ませつつ、しかし内容はしっかりとある。3部作の最後の作品が早く読みたい!
  • 犯罪者にも家族がいるということをあらためて思い出させてくれた作品です。ましてやそれが子どもだった場合、どれだけの影響下におかれていたのかと想像するだけで痛々しく、さらには犯罪者自身よりもその罪を背負って長く生きていかなければならないという事実が悲しい。ですが、本国ではヤングアダルトとして出された本書は、そんな運命を背負った少年と友人たちをいきいきと描いていて、とても読み応えがありました。
  • 主人公のジャズも魅力的なのですが、ハウイーが出てきてからは、ハウイーに乗っかって一気読みした感じでした。
第10位『スキン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子(訳) 文藝春秋
  • ディーヴァーらしさ全開。読むものを楽しくさせる、これぞ、エンターテインメントの白眉。
  • リンカーン・ライムシリーズ 本当に毎回楽しませてドキドキしながらページをめくってます。このシリーズがどこまで続くのか、終わりは来るのかとか気になりながらも読んでいってます。ジェットコースターサスペンスのスピート感とあっと言わせるどんでん返しも良いですがチームライムの面々にシリーズが続くごとに愛着が湧いていってます。
  • 新刊が出ればブックトラックに置いてあるのをかっさらってでも買っているリンカーン・ライムシリーズ。今作を読み終わった時には前の2作のように思わず涙が、というのではなくこれぞリンカーン・ライムという展開と結末にまさかシリーズ終わりじゃないよね? と焦ったほどです。ボーン・コレクターから始まった世界が積み重なり繋がって出来上がった作品なのに、ここから読み始めた人にもシリーズ読者にも1作目から読みたいと感じさせる力のある作品だと思います。
第10位『ザ・ドロップ』デニス・ルヘイン/加賀山卓朗(訳) 早川書房
  • とにかくしびれました!
  • 無駄のない、クールで引き締まったクライムサスペンスを堪能。主人公ボブの静かな佇まいと、彼を取り巻く混沌とした世界のコントラストが素晴らしい。これからはデニス・ルへイン最初の一冊にコレを勧めることにしよう。
  • ぱっとしない孤独なバーテンダーが身に降りかかった難題をどう処理するのか。決着のつけかたがみごと。
第10位『世界の終わりの七日間』ベン・H・ウィンタース/上野元美(訳) 早川書房
  • 一つのシリーズが「3年続けて12月のポケミス新刊」というのは一種偉業である。「クリスマスにクリスティを」というのは、ミステリー史上に輝くコリンズ社の名コピーだが、ここ3年、我々は「ウインターにウインタースを」だったわけである。そして、年の瀬のカウントダウンとともに、この地球のカウントダウンストーリーに親しむ。暦年から2か月前倒しが通例の各種年間ミステリーベストからは漏れてしまいがちになるタイミングであり、マーケティング的には「敢えて茨の道を行く」戦略だ。なればこそ、この暦年に忠実な翻訳ミステリ-読者賞で、日本で最も速くこの作品に年間ベストの栄誉を与える意義もでてこようというものだ。ユーモラスでややキワ物感のあった第1作、そして退廃と謀略のアンサンブルであった第2作を受けたこの最終作は、堂々のハードボイルドミステリ-だった。「人探し」の伝統、律儀なフーダニットとハウダニット(しかも容疑者極少の中で、である)、更に家族の悲劇に完成させたうえで、まるでノーマン・ロックウェルの絵の如き古き良きアメリカの日常を切りとった静謐なエンディングへと読者をいざなう。お見事。そして、ありがとう。絶滅危惧種である翻訳ミステリ-のカウントダウンを数年は先に送る、そんな力を感じさせるシリーズであり、その掉尾を飾るにふさわしい快作だった。
  • シリーズ3冊とも心に残る作品で、本作品では最後の時を迎える主人公の気持ちがわかるようでわからないような不安な心持ちで、希望がないところで希望をいかにして持つのかなどについて、自分に置き換えて考えさせられた影響が大きいと思ったので、選びました。
第10位『ありふれた祈り』ウィリアム・ケント・クルーガー/宇佐川晶子(訳) 早川書房
  • タイトルの意味がわかったとき、胸に込み上げるものがありました。
  • 悩みましたが、一番好きな作品を選びました。
  • ひとりの少年の成長譚として秀逸だが、じっくりと読ませるミステリの秀作。そして何より翻訳が素晴らしい。
第10位『水の葬送』アン・クリーヴス/玉木亨(訳) 東京創元社
  • まさか新シリーズが始まるとは思いませんでした。派手さのまったくない、地味な作品ですし、傑作とは言い難いかもしれませんが、前のシリーズから引き続き、応援している読者もいると知ってもらえたら嬉しいです。
第10位『報復』ドン・ウィンズロウ/青木創・国弘喜美代(訳) KADOKAWA
こちらにはコメントがありませんでした。次回は16位の作品コメントをご紹介します。

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