第9回浜松読書会レポート(執筆者・山本三津代)

 春です! 寒暖差が激しいとは言え、もうすぐ平成も終わるし、令和が始まり、ゴールデンなウィークに突入ですよ! 新年度、新学期、新入生、新社会人…etcと様々な場面で New!ってPOPを貼り付けた初々しい人たちも少しは馴染めてきたのかなと思える時期です。

持ち寄られた出版社違いの『奇岩城』

 ご存知の方も多いかと思いますが、簡単にあらすじを。

 深夜、フランス、ノルマンディー地方の富豪ジェーブル伯爵邸で強盗殺人事件が発生。その家に住む令嬢が犯人に負傷させるも犯人は見つからず、被害もはっきりしない。

 旅行中だった高校生名探偵登場。並み居る警官をよそに犯人をルパン一味だと推理する。

 そこから始まるロマンスあり(重要)の冒険活劇。

 美少女が誘拐されたかと思えば、老人が拉致され、ひとつ謎が解けたと思えば、フランスの歴史に深く関わる更なる謎が!

 国内外にその名を轟かせる英国人名探偵も登場し、事件は結末に向かってどんどん加速していく。

 このあらすじを書いてて、軽く読書欲を煽られてしまいました。…自分で自分を煽れるお手軽なわたし…

 ホームズに並んで有名なルパンシリーズですが、参加者の皆さんに初めて読んだのはいつか? をお聞きしつつ、自己紹介から読書会スタート。

 小学生時代にポプラ社の南洋一郎翻訳版で初めて読んだ人が多いかなーと予想してたんですが、確かにほぼそのパターン。でも、なんと今回の読書会で初めて読んだと言う方が参加者の1/3を占めました。その方々曰く「ホームズと乱歩(怪人二十面相)とルパンを比べてホームズ(又は乱歩)を選んだ」そうです。なるほど。

 初読ではないものの大人向け翻訳バージョンは未読な方は今回読み返して新たな気付きがあったようです。私も今回、早川書房、偕成社、ポプラ社、青空文庫を読み比べて、その違いが楽しかったです。

 今回の読書会でも様々な意見が飛び出しました。こちらはごく一部、ネタバレに触れない程度です。

*怪人二十面相と小林少年は完璧にルパンとイジドールだね!

*途中まで読んで「あ、ココ!」と思い出した。(多数)

*ルパン大人気ない。厨二病。

*イジドール泣きすぎ。ルパンにイジられまくり。厨二病その2。

『奇岩城』の主人公はイジドール。

*ちゃんと高校生として、学業を優先してる所が素晴らしい! 「スプリガン」の元ネタとして初めて腑に落ちた。

*レイモンドの女性として想い。ルパンへの深い愛かそれとも諦観か。

愛こそ全てなところがフランスっぽいよね〜。

*ところでレイモンドは一体いつルパンを好きになったの? → 「目と目が合ったその瞬間です!(キッパリ)」

*その辺りも含めて森田崇『アバンチュリエ』で詳しく補完して描かれてます。オススメ!

*ホームズの扱い酷すぎ。←このせいでホームズファンからは嫌がられてる。

*ガニマール警部とホームズの存在意義がわからない。

*ルパン三世のイメージが強すぎて、なかなか抜け出せない。←日本人あるある過ぎて…

*ヒロインの扱いがボンドガール的。← 一同思わず「おお〜!」と声が出た。

 …などなど、大人になった皆さまから、こどもの頃読んだ記憶と今回改めて読んだ感想が入り混じった意見が多数出て、活発な意見交換が出来ました。

 大雑把にまとめるとアルセーヌ・ルパンのシリーズは謎解きや冒険活劇を純粋に楽しめる作品だが、全編通してルパンの人間性を楽しむ作品なんだと思います。

 最後に次に読むならこの1冊を参加者に挙げて貰いました。犯罪者が主役な作品として『紅はこべ』『怪盗ニック』シリーズ『怪人二十面相』シリーズ。少年探偵物として『女王陛下の少年スパイ! アレックス』シリーズ『名探偵カッレくん』『黄色い部屋の秘密』『見習い探偵ジュナの冒険』etc…

 映像作品や日本の作品も多数上がりましたが、ここでは割愛させて頂きます。

 次回の浜松読書会は、当初の予定では6月に開こうと考えていましたが、世話人の都合が合わず、現在まったくの未定です。先日のコンベンションで各社イチオシ作品の情報も仕入れましたし、日程及び課題書が決まりましたら、Twitterやシンジケートサイトでお知らせしますので、よろしくお願い致します。

浜松読書会世話人

山本 三津代(@nirokuya

 

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海外のミステリー小説専門の読書会です。 開催地は北海道から九州まで全国に広がっていて、多くの参加者にお楽しみいただいています。 参加資格は課題書を読み終えていることだけ。ぜひお近くの読書会にご参加ください。 また、読者が選ぶ翻訳ミステリー大賞、略して『どくミス!』を年に一回(4~5月)開催しています。 こちらも併せてお楽しみください。

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