第8回大阪読書会レポート:課題書『誠実な嘘』(執筆者・信藤玲子)
2021年8月29日、大阪翻訳ミステリー読書会をオンラインで開催しました。
今回の課題書『誠実な嘘』は、CWAゴールド・ダガー賞を二度受賞したマイケル・ロボサムによる話題作であり、イギリスやオーストラリアではドラマ版も人気を博しています。
訳者の田辺千幸さんをゲストにお迎えし、総勢11人でこの作品の魅力について語り合いました。
今回の課題書『誠実な嘘』は、CWAゴールド・ダガー賞を二度受賞したマイケル・ロボサムによる話題作であり、イギリスやオーストラリアではドラマ版も人気を博しています。
訳者の田辺千幸さんをゲストにお迎えし、総勢11人でこの作品の魅力について語り合いました。
[amazonjs asin="4576210890" locale="JP" tmpl="Small" title="誠実な嘘 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)"]
〈ストーリー〉
恋人と遠く離れ、ひとりスーパーマーケットで働くアガサと、スポーツキャスターの夫を持ち、誰もが憧れるような家庭を築いたメグ。そんな正反対とも言える境遇のふたりには、ふたつの共通点があった。ひとつは、大きなおなかを抱えていること。そしてもうひとつは、誰にも言えない「秘密」を抱えていること……
恋人と遠く離れ、ひとりスーパーマーケットで働くアガサと、スポーツキャスターの夫を持ち、誰もが憧れるような家庭を築いたメグ。そんな正反対とも言える境遇のふたりには、ふたつの共通点があった。ひとつは、大きなおなかを抱えていること。そしてもうひとつは、誰にも言えない「秘密」を抱えていること……
アガサとメグが交互に語り手となって、物語が展開していきます。「秘密」を守るために、嘘を重ねていくふたり。どちらも感情移入しづらいキャラクターだけに、参加者のみなさんの感想もさまざまに分かれました。
〈アガサ〉
・人生であらゆるものに翻弄され続けてきたアガサが気の毒に思えた
・アガサはたしかにかわいそうだが、でも……
・「ばかな娘!」と自らを呼びかけるアガサの内なる声から、アガサが大人になりきれていないことが伝わってきた
・ほんとうは頭がいいのだから、周囲を冷静に見ることができていたら、何かが変わったのではないか
・アガサはいったい何を求めていたのか?
・人生であらゆるものに翻弄され続けてきたアガサが気の毒に思えた
・アガサはたしかにかわいそうだが、でも……
・「ばかな娘!」と自らを呼びかけるアガサの内なる声から、アガサが大人になりきれていないことが伝わってきた
・ほんとうは頭がいいのだから、周囲を冷静に見ることができていたら、何かが変わったのではないか
・アガサはいったい何を求めていたのか?
〈メグ〉
・ふつうの人というか、優等生タイプだなと感じた
・夫のジャックと自分をシーザーとクレオパトラになぞらえてブログを書いているのが鼻についた
・ジャックはそれほどかっこいいのか? 少なくとも優秀とは思えない
・将来、この一家がいったいどうなるのかが気になった。波乱があるのでは?(という意見が大半でしたが、「今後は互いを想い合って幸せに暮らしてほしい。甘いですかね?」という声も、読書会後にいただきました)
・ふつうの人というか、優等生タイプだなと感じた
・夫のジャックと自分をシーザーとクレオパトラになぞらえてブログを書いているのが鼻についた
・ジャックはそれほどかっこいいのか? 少なくとも優秀とは思えない
・将来、この一家がいったいどうなるのかが気になった。波乱があるのでは?(という意見が大半でしたが、「今後は互いを想い合って幸せに暮らしてほしい。甘いですかね?」という声も、読書会後にいただきました)
〈全体的な感想〉
・物語の展開が気になって、どんどん読み進んだ(ページ数が多いのに、一気読みしたとの声が圧倒的多数!)
・男性の作家なのに女性の描き方がとても自然だった
・自分は子どもが欲しいと強く思っているわけではないが、子どもが欲しい人にとっては、つらい小説なのではないだろうか
・アガサとメグだけなら、「子どもがいること=幸せ」という価値観に陥りかねないが、結婚や出産にとらわれず自由に生きる女として、メグの妹のグレースを設定しているので、目配りがきいていると感じた
・物語の展開が気になって、どんどん読み進んだ(ページ数が多いのに、一気読みしたとの声が圧倒的多数!)
・男性の作家なのに女性の描き方がとても自然だった
・自分は子どもが欲しいと強く思っているわけではないが、子どもが欲しい人にとっては、つらい小説なのではないだろうか
・アガサとメグだけなら、「子どもがいること=幸せ」という価値観に陥りかねないが、結婚や出産にとらわれず自由に生きる女として、メグの妹のグレースを設定しているので、目配りがきいていると感じた
参加者のみなさんの深い考察に、ゲストの田辺さんも興味津々のご様子でした。
さらに、田辺さんから、アガサの恋人であるヘイデンが物語の進行とともに変化を遂げることについて、意見を聞いてみたいとの問いかけがありました。
みなさんの意見としては、
さらに、田辺さんから、アガサの恋人であるヘイデンが物語の進行とともに変化を遂げることについて、意見を聞いてみたいとの問いかけがありました。
みなさんの意見としては、
・妻と子という守るべきものができれば、男性は変わるのではないか
・奥さんが妊娠して変わる男性はいる
・自分の両親に諭されたのではないか
・男は身勝手だから、〝自分の子ども〟と思うことで、ようやく変わることができたのではないか(男性の参加者のご意見です)
・奥さんが妊娠して変わる男性はいる
・自分の両親に諭されたのではないか
・男は身勝手だから、〝自分の子ども〟と思うことで、ようやく変わることができたのではないか(男性の参加者のご意見です)
とのことでした。男は身勝手なのか……勉強になりました!
参加者のなかには、田辺さんが訳されている〈貧乏お嬢さまシリーズ〉のファンだという方もいらっしゃいました。
翻訳について田辺さんにおうかがいしたところ、コージーだから、あるいはサスペンスだからと、ジャンルをとくに意識しているわけではなく、テキストにそって忠実に訳すよう心がけているとのことでした。
翻訳について田辺さんにおうかがいしたところ、コージーだから、あるいはサスペンスだからと、ジャンルをとくに意識しているわけではなく、テキストにそって忠実に訳すよう心がけているとのことでした。
アガサとメグのそれぞれの生き方やパートナーとの関係を通じて、「完璧な家庭」は存在するのか? 秘密を抱えたまま幸せになれるのか? 過去のあやまちを償うことはできるのか? ……など、深く考えさせられる物語でした。
また、このレポートを書くにあたり、田辺さんに今回の読書会についてお聞きしたところ、「いろいろと感想をうかがえて、とても勉強になりました」と、参加者のみなさんへのお礼のお言葉をいただきました。こちらこそ、ありがとうございました!
最後に、大阪読書会では、参加者のみなさんに課題書に関連するテーマの本をオススメしてもらう時間を設けています。
今回のテーマ「赤ちゃんが出てくる本」で挙がった本は、以下のとおりです。
今回のテーマ「赤ちゃんが出てくる本」で挙がった本は、以下のとおりです。
『ローズマリーの赤ちゃん 』(アイラ・レヴィン著 高橋泰邦翻訳 早川書房)
『揺りかごが落ちる 』(メアリ・H・クラーク著 深町眞理子翻訳 新潮社)
『すばらしい新世界〔新訳版〕』(オルダス・ハクスリー著 大森望翻訳 早川書房) ※光文社古典新訳文庫(黒原敏行訳)もあり
『八日目の蝉』(角田光代著 中央公論新社)
花咲慎一郎シリーズ (柴田よしき著 講談社)
『憂鬱な10か月』 (イアン・マキューアン著 村松潔翻訳 新潮社)
『湖畔荘』(ケイト・モートン著 青木純子翻訳 東京創元社)
『チャイルド・ファインダー 雪の少女』 (レネ・デンフェルド著 細美遙子翻訳 東京創元社)
『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(デボラ・インストール著 松原葉子翻訳 小学館)
『彼女のいない飛行機』 (ミシェル・ビュッシ著 平岡敦翻訳 集英社)
『朝が来る』 (辻村深月著 文藝春秋)
『ガール・オン・ザ・トレイン』(ポーラ・ホーキンズ著 池田真紀子翻訳 講談社)
『揺りかごが落ちる 』(メアリ・H・クラーク著 深町眞理子翻訳 新潮社)
『すばらしい新世界〔新訳版〕』(オルダス・ハクスリー著 大森望翻訳 早川書房) ※光文社古典新訳文庫(黒原敏行訳)もあり
『八日目の蝉』(角田光代著 中央公論新社)
花咲慎一郎シリーズ (柴田よしき著 講談社)
『憂鬱な10か月』 (イアン・マキューアン著 村松潔翻訳 新潮社)
『湖畔荘』(ケイト・モートン著 青木純子翻訳 東京創元社)
『チャイルド・ファインダー 雪の少女』 (レネ・デンフェルド著 細美遙子翻訳 東京創元社)
『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(デボラ・インストール著 松原葉子翻訳 小学館)
『彼女のいない飛行機』 (ミシェル・ビュッシ著 平岡敦翻訳 集英社)
『朝が来る』 (辻村深月著 文藝春秋)
『ガール・オン・ザ・トレイン』(ポーラ・ホーキンズ著 池田真紀子翻訳 講談社)
毎回思いますが、これだけで立派な読書ガイドになりますね。書評七福神のガイドにも引けを取らない……(いえいえ、「嘘」です)
さて、次回の大阪読書会の予定はまだ決まっていませんが、年内にもう一回開催できればと考えています。この状況では、次回もきっとオンライン開催になるかと思いますので、全国各地からのご参加をお待ちしております。
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