『マルタの鷹』読書会レポート
みなさま、こんにちは。
西東京読書会の小林です。
『マルタの鷹〔新訳版〕』(ダシール・ハメット著/田口俊樹訳/創元推理文庫)を課題図書とした第37回西東京読書会を昨日(2025年6月28日)JR中央線武蔵境駅近くの会議室(東京都武蔵野市)で開催しました。
アメリカで1930年に出版された本作が日本で初めて翻訳書が刊行されたのが1954年。
何人もの翻訳家による訳書が発売されてきましたが、今年4月に田口俊樹氏による新訳が刊行されました。
それを記念して、田口先生と東京創元社の編集者の方をお招きし、コロナ禍以前の当会の規模に匹敵する総勢17名での読書会となりました。
そのときに出た読書感想を一部ご紹介いたします。
(※ネタバレになるかもしれませんので未読の方はご注意ください)
・サム・スペードの突き抜けたかっこよさがいい。
・登場人物の会話文が生き生きとしている。たとえば「ちがわない」(ブリジッド・オショーネシーの口調がかわいらしい)。「”しかし”も”案山子〈かかし〉”もあるか!」(スペードの洒落の利いたセリフ)。
・新訳で物語の輪郭がはっきりとした。
・著者ハメットの意図がわかりやすくなった。
・乾いた文体が新訳で際立った。
・ハメットがOne&Onlyの作家であることがより明確になった。
・アイヴァが登場する終わり方にユーモアを感じた。
・スペードの造形のすばらしさ。たとえばガットマンに強気に出たかと思えばじつは手が震えていた場面など。
・秘書エフィとスペードはいったいどんな関係だったのか?
(みなさんで意見交換。男女の関係があったかなかったかで意見が割れました)
・女性キャラクターの描き方がよかった。
・スペードの女性の扱いに居心地の悪さを感じたが、そもそも人間嫌いなのではないかと思った。
・ブリジッドはスペードに恋愛感情があったのか?
(これも意見が割れました)
・秘書エフィの作中での役割はスペードにとっての日常の象徴ではないかと思う。
・細部の描写、アクションの描写が見事。
・ハードボイルドの定義であると思われる非情さとやさしさのバランスでいうと、本作は非情さが勝っているのではないか。
・ブリジッドの嘘にスペードはいつから気づいていたのか。
(これも興味深い意見交換が出ました。ふたりの人物の殺され方でわかった/かなり最初のほうからわかっていたのではないかなど)
・本作の肝は犯人が意外な人物であること。
・男と女の小説
・ハードボイルドの面白さが新訳でわかった。
読書感想が一巡したあと、テーマディスカッションでさらに意見を交換しました。
Qアイヴァの役割とは?
謎の提示/日常に戻る象徴/スペードの一面を描くため
Q7章でスペードがブリジッドに語る探偵社時代の不思議な話フリットクラフトの挿話は何を意味しているのか?
ブリジッドの象徴なのではないか。
最後にゲストトークとして田口先生にお話を伺いました。
Q田口先生が手掛けたハードボイルドの新訳のなかでいちばん力がはいった作品は?
『動く標的』ロス・マクドナルド
『血の収穫』ダシール・ハメット
『長い別れ』レイモンド・チャンドラー
『マルタの鷹』ダシール・ハメット
先生の回答は『長い別れ』。
※それについては全国翻訳ミステリー読書会主宰YouTubeライブの公開読書会で田口先生にたっぷり語っていただいたのでアーカイブをぜひご覧ください。
約二時間の読書会本会も、その後近くの飲食店に場所を移して懇親会も大変盛り上がり、貴重なお話をゲストのおふたりから聞かせていただき、また参加者同士で『マルタの鷹』をはじめとした翻訳ミステリーの面白さを語り合う楽しいひとときになりました。
参加のみなさま、ありがとうございました!
(小林さゆり/西東京読書会)
0コメント