読書会レポート:第13回神戸翻訳ミステリー読書会 ガイ・バート『ソフィー』

 2026年1月17日(土)に、久々の開催となりました神戸読書会です。

 海のものとも山のものともわからない新しい世話人の呼び掛けに多くの方が応えてくださり、開催一か月前には満席となりました。京阪神エリアからだけでなく関東方面からも参加してくださった方もいらして、本当にありがとうございます。

 神戸にとって忘れられない日を再出発に選んでしまったのですが、とてもいいお天気でした。今後の神戸読書会のゆくえを示してくれていると願わずにはいられません。


 課題書は ガイ・バート『ソフィー』 でした。

 参加者18名のうち、この読書会以前から『ソフィー』を読んでいた/読んではいないが存在を知っていた人が5名、この開催案内を見てはじめて『ソフィー』を知った人が13名ということがわかり……わーっ、課題書にした甲斐があったよぉ、と小躍りしたのでございます。

 みなさまからのお話がとまらず、あっという間の二時間でした……充実した時間になっていたのではないでしょうか。よかったです、ありがとうございます。

 ただ、どういうことを話したかまとめると確実にネタバレになってしまいます。差し障りのない範囲でお伝えできればと思います。


 まず、全員が「全然すっきりしない!(いい意味でも悪い意味でも)」と。「いったい何が起こったのかよくわからないまま読み終わってしまった(愕然)」も多かったです。ですよね! わからないのはわたしだけじゃないんだ!、とみんなで確認しあいました。

 「すっきりしない、いい意味で」の方々によれば……文章が文学的、美しいんだけどずっと不穏でドキドキした。よくわからないけど物語に入り込み、自分の子供時代を思い出した。よくわからないけど世界がガラガラと崩れていくのを見た気持ちに。などなど、具体的に何が起こったのかはよくわからないけれど、個々のエピソードが刺さり、ノスタルジーだけではない自分の過去に引き戻されるような感覚があったとのこと。主に子供時代の回想なので、大人になったからこそ感じる〈あやうさ〉にハラハラしっぱなしと……わかります。

 また、「すっきりしない、悪い意味で」の方からは、これだけの〈わからなさ〉を放置したままでいられるのは作者の未熟さ故ではないのか、と厳しい指摘が。なるほど、その視点はなかったです。


 ガイ・バートの前作『体験のあと』(矢野浩三郎訳/集英社:のちに『穴』と改題 アーティストハウス)ではエピローグで「どう読めばいいか」を教えてくれてそれがさらなる衝撃を生むのですが、『ソフィー』にはそういう〈ヒント〉はなく、すべてが読者にゆだねられます。それを読者への信頼ととるか、読者に対して不親切すぎるととるか……なのかもしれません。私は約27年前にはじめて『ソフィー』を読み、一生抜けない棘となりあえてもう一度読もうとならなかったのですが、今回再読して当時とは全然違う感情・解釈になりました。作者の意図はわかりませんが、読者のコンディションによって〈読み〉が変わっていく種類の物語であることは間違いありません。


 特に衝撃の最終章について(衝撃は各章にあるのですが)、多くの「これはどういうことですか?」が飛びかうなか、解釈をおおきく3つまで絞ることができました。その3つの中にも数多くのバリエーションがあるのですが……それでもまとめることができたのは参加者全員がそれぞれの実直な〈読み〉を開示し、意見を深めてくださったおかげです。これぞまさに読書会の意義! 本当にありがとうございました。


 まだ『ソフィー』を読んだことのない方、ぜひこの「わからなさ」を体験してください。難しい文章ではないんです。むしろ読みやすいからすらすら進んでいくんですが、何が描かれているのか本当にわからない。時折立ち止まって周囲を見ながら歩いていてもいきなり崖に出くわすような、深い森に踏み混んでいくような感覚です。それでも、参加者は「読んでよかった、こんな作品にはめったに出会えない」と言ってくれています。そして神戸読書会に参加してくれたらこのときの解釈についてお話しできます。既読の方も是非、『ソフィー』について語りたい方はいつでも神戸読書会へいらしてください。


 次回の神戸翻訳ミステリー読書会は5月中旬を予定しています。

 物価高騰・書籍代高騰の折、神戸読書会ではできるだけ課題書を文庫本から選んでいきたいと考えています。参加費の学割も継続します。お気軽な読書会の一例として選択肢に入れていただければと思います。

 この先、翻訳小説に風当たり強くなりそうな気配を感じなくもないですが……翻訳ミステリー読書会を開催し続けますので、興味のある方はぜひご参加ください。お問い合わせもどうぞお気軽に。


神戸翻訳ミステリー読書会

世話人 山田邦子

MAIL TO:kobe2hon-yakumysterybookclubkobe@outlook.jp


全国翻訳ミステリー読書会

海外のミステリー小説専門の読書会です。 開催地は北海道から九州まで全国に広がっていて、多くの参加者にお楽しみいただいています。 参加資格は課題書を読み終えていることだけ。ぜひお近くの読書会にご参加ください。 また、読者が選ぶ翻訳ミステリー大賞、略して『どくミス!』を年に一回(4~5月)開催しています。 こちらも併せてお楽しみください。

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